ANSWER / 結論
警察のドローン関連予算は2023年度22億5,700万円(前年比20倍超)。試行段階から本格運用段階へ移行。
📝 この記事の要点
- ●小型無人機等飛行禁止法(平成28年法律第9号)を所管する警察庁は、法執行者として内製運用が原則。
- ●活用領域は捜査・警備・災害対応・山岳救助・交通・防犯・対ドローンの7領域。要人警護・テロ対策では一等資格が必須化。
- ●捜査資料としての証拠能力を担保する運用記録(飛行ログ・改ざん防止)の整備が民間と決定的に異なる点。
📊 重要な数字とデータ
| 警察ドローン関連予算(2023年度) | 22億5,700万円(前年度比20倍以上)(出典: 警察庁公開資料) |
|---|---|
| 本格運用の起点 | 2018年7月 西日本豪雨(岡山県)で初の大規模災害活用(出典: 警察庁) |
| 小型無人機等飛行禁止法の規制範囲 | 重要施設の敷地・区域および周囲おおむね300m上空。違反は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(出典: 警察庁) |
| 一等資格の活用場面 | 要人警護・テロ対策・大規模災害広域偵察で立入管理なしの特定飛行が必要(出典: 国土交通省) |
目次
「県警全体でドローン人材を体系的に育成する」「要人警護・テロ対策への対応で一等資格取得を検討している」——本記事では、警察組織のドローン活用・法的特殊性・人材育成・機材選定を実務レベルで解説します。小型無人機等飛行禁止法を所管する警察ならではの二重の立場(法執行者かつ運用者)と、捜査資料としての証拠能力を担保する運用設計まで整理します。
警察ドローン活用の現状(2026年4月)
配備の転換点
| 時期 | 出来事 | 影響 |
|---|---|---|
| 2016年 | 小型無人機等飛行禁止法施行 | 警察庁が法執行の主体に |
| 2018年7月 | 西日本豪雨(岡山県)で初の本格運用 | 災害対応への投入が確立 |
| 2021年7月 | 熱海市土石流災害対応 | 被災状況の即時把握に有効性確認 |
| 2023年度 | 関連予算が前年比20倍超に急拡大 | 本格的な内製運用フェーズへ移行 |
2023年度予算で20倍超に拡大
警察庁の2023年度予算では、カメラ付きドローンやAIによる異常行動検知システムなどのドローン関連費用として22億5,700万円が計上されました。これは前年度比20倍以上の規模です。「試行段階」から「本格運用段階」へ移行したことを示しています。
7つの活用領域
| 領域 | 主な活用 | 必要機能 |
|---|---|---|
| 捜査支援 | 現場検証・逃走者追跡・犯行ルート再現 | 高解像度カメラ・サーマル・ズーム |
| 警備 | 要人警護・大規模イベント・テロ対策 | 長時間飛行・AI連携・暗視 |
| 災害対応 | 被害把握・行方不明者捜索・物資支援 | 広域・長距離・サーマル・防水 |
| 山岳救助 | 遭難者捜索・孤立者への物資投下 | 高高度対応・耐寒・耐風・サーマル |
| 交通 | 事故現場記録・渋滞把握・違反追跡 | 高速移動対応・長時間飛行 |
| 防犯 | 夜間パトロール・不審者検知 | 暗視カメラ・AI連携 |
| 対ドローン | 違法ドローン検知・追跡・無力化 | 対ドローン専用機・専門訓練 |
主な事例:警視庁鑑識課が死体遺棄事件を想定したドローン×警察犬連携訓練を2018年10月に実施。大阪府警は大阪・関西万博(2025年)でAI連携警備を運用。栃木県警は2017年那須岳雪崩事故を契機に山岳救助向けドローンを整備。
小型無人機等飛行禁止法の所管者としての特殊性
警察は法執行者であると同時に運用者という二重の立場に立ちます。
規制の概要
小型無人機等飛行禁止法(平成28年法律第9号)は警察庁が所管します。国会議事堂・首相官邸・外国公館・原子力施設等の敷地および周囲おおむね300m上空での飛行が原則禁止です。違反は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
警察職員の例外飛行
警察職員は職務執行のため例外飛行が可能ですが、都道府県公安委員会への通報・重要施設管理者の同意・飛行時間/経路/目的の記録・飛行後の報告書作成が必要です。
運用設計の特殊性
- 自組織の運用ミスが報道・住民信頼に与える影響が大きい
- 守秘義務(捜査情報・要人警護情報)が極めて厳しい
- 訓練データ・運用記録の管理水準が極めて高い
- 捜査資料としての証拠能力を担保する運用記録整備が必須
捜査資料としての証拠能力を担保する運用記録
警察ドローンが取得した映像・写真は公判での証拠になり得ます。民間と決定的に異なる点です。
証拠能力を担保する要件
- 撮影日時の正確性(機体GPS時刻と現実時刻の整合)
- 改ざん防止(撮影データのハッシュ値記録)
- 撮影者・操縦者・運用責任者の明確化
- 飛行記録と撮影記録の整合(連続性の確保)
- オリジナルファイルの二重保存
運用記録に含める項目
飛行年月日時・飛行場所(GPS座標)・飛行目的・機体情報(登録記号・型式)・撮影内容・公安委員会への通報状況・飛行ログのバックアップ
推奨機材
| 用途 | 推奨機体 | IP等級 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 広域捜索・警備 | DJI Matrice 350 RTK | IP55 | 長時間飛行・高拡張性 |
| 捜査・山岳救助 | DJI Matrice 30T | IP55 | サーマル+望遠一台完結 |
| 機動対応 | DJI Mavic 3 Enterprise | IP43 | 携帯性・即時展開 |
必要資格と使い分け
二等資格でカバーできる業務
立入管理措置が可能な標準業務(訓練・通常の捜査・交通調査・一般市街地の昼間飛行)は二等で対応可能です。
一等資格が必要な業務
| 業務シーン | 理由 |
|---|---|
| 要人警護・大規模イベント警備 | 立入管理なしの特定飛行・レベル4飛行 |
| 緊急捜査での逃走者追跡 | 立入規制を待っていては機を逸する |
| テロ対策 | 即応性が要件 |
| 大規模災害の広域偵察 | 長距離・目視外・夜間の複合運用 |
詳細はドローン国家資格の取り方を参照してください。
限定変更は全員が夜間・目視外を取得することを推奨します。
段階的人材育成モデル(中規模道府県警察・3年計画)
| フェーズ | 対象 | 資格 | 機材 |
|---|---|---|---|
| Year 1 | 警備部装備課・鑑識課・山岳救助担当5〜10名 | 二等国家資格 | 標準機体3〜5台・サーマル機1〜2台 |
| Year 2 | 警備部・特殊救助部・捜査一課2〜3名 | 一等国家資格+限定変更(夜間・目視外) | 高性能機追加・対ドローン装備 |
| Year 3 | 県警全体 | 運用アドバイザー10〜15名認定 | 各警察署への基礎機体配備 |
法人研修プランと補助金
研修プラン
| プラン | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 出張研修(NDA対応) | 警察施設・訓練場での実地訓練 | 捜査・警備シナリオ・私服対応 |
| 通学研修(特別枠) | 横浜校・千葉流山校での団体受講 | 一般受講生と分離・完全屋外実技 |
| 一等資格取得パッケージ | 警備部・特殊救助部向け | レベル4・夜間・目視外 |
| 対ドローン研修 | 違法ドローン検知・無力化手順 | 法的根拠の整理を含む |
一等無人航空機操縦士コース
二等無人航空機操縦士コース
限定変更コース(夜間・目視外)
無料相談・お問い合わせ
補助金
警察庁の通常予算が中心です。2023年度の22億5,700万円規模が示すとおり、警察庁の予算枠内での整備が標準ルートです。
DSLの強み
ドローン免許センターが警察組織の研修で選ばれる理由は、**「守秘義務契約(NDA)対応と完全屋外実技」**に加え、捜査資料としての証拠能力を意識した運用記録テンプレートの提供、要人警護・テロ対策・山岳救助シナリオを組み込んだ警察特化カリキュラム、一等資格・限定変更・対ドローン研修まで一貫対応できる指導体制です。私服対応・報道露出制限への配慮も標準で行います。
よくある質問
Q1. 警察職員もドローン国家資格を取れますか?
取得可能です。登録講習機関での受講は一般と同じ手続きです。業務命令受講が標準的で、警察組織内の決裁手続を経て受講します。学科オンライン受講を活用すれば業務との両立も可能です。
Q2. 守秘義務契約(NDA)に対応していますか?
はい、警察組織研修ではNDA締結が標準です。受講者リスト・訓練内容・成果物の非公開対応が可能です。私服対応・報道露出制限への配慮も行います。
Q3. 一等資格は警察業務で必要ですか?
業務領域によります。標準的な捜査・警備は二等で対応可能ですが、要人警護・テロ対策・レベル4対応は一等が事実上必須です。県警全体で二等中心+一等選抜の構成が標準です。
Q4. 撮影映像を捜査資料として使うには何が必要ですか?
飛行ログ・撮影日時・操縦者・目的の記録、データのハッシュ値による改ざん防止、オリジナルファイルの二重保存が必要です。DSLでは運用記録テンプレートの提供とサポートを行っています。
Q5. 対ドローン対策の研修は受けられますか?
はい、違法ドローン検知装置の運用、無力化技術の知識、小型無人機等飛行禁止法第10条に基づく捕獲・破壊措置の法的根拠を含む対ドローン研修を提供しています。
Q6. 何名の資格取得が必要ですか?
中規模道府県警察で二等5〜15名・一等2〜5名が標準です。限定変更(夜間・目視外)は全員取得を推奨します。
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導入事例:警察組織のドローン内製化事例
事例1:A道府県警察 ── 山岳救助部門でドローン内製化、捜索リードタイム8時間短縮
年間70〜90件の山岳遭難対応を担うA道府県警察山岳救助隊の事例です。従来はドローン専門業者へ都度委託しており、業者到着まで平均5〜8時間のロスタイムが発生していました。遭難者の生存率に関わる「骨折・低体温症の発見遅れ」が課題でした。
警備部装備課・山岳救助隊の選抜8名が二等国家資格と限定変更(夜間・目視外)を取得。DJI Matrice 30T(サーマル+望遠カメラ搭載・IP55)を3台整備しました。
導入前後の比較:
| 項目 | 導入前 | 導入後 | 改善効果 |
|---|---|---|---|
| 業者委託費用 | 20〜35万円/件 | 0円(内製) | 年間約1,050〜2,100万円削減 |
| 業者到着待機時間 | 平均5〜8時間 | 0分(即時出動) | 捜索開始が8時間早まる |
| 夜間サーマル捜索の実施可否 | 不可(業者対応不可が多い) | 可(24時間体制) | 夜間発見件数が向上 |
| 捜索範囲(1フライト) | — | 半径3〜5km(地上班の5倍超) | 広域捜索を少人数で実施可能 |
証拠映像の管理については、GPSタイムスタンプ付きの飛行ログとハッシュ値による改ざん防止記録の標準化を同時に整備しました。
事例2:B県警察 ── 大規模イベント警備に一等資格運用、警備費2,400万円削減
年間3〜4件の大型イベント(観衆5万人超)警備を担当するB県警察が、一等資格取得者によるカテゴリーIII飛行(第三者上空)体制を整備した事例です。
従来は地上警備員の増員(1イベント平均25名超)で対応していましたが、ドローンの俯瞰監視を組み合わせることで地上警備員を15〜18名に削減しながら、群衆密度の把握精度は向上しました。
3年間の育成・効果:
| フェーズ | 投資内容 | 効果 |
|---|---|---|
| Year 1(二等5名・機材整備) | 約200万円 | 周辺巡回対応 |
| Year 2(一等3名・カテゴリーIII対応) | 約280万円 | 第三者上空飛行可能 |
| Year 3(運用定着・効果測定) | 約80万円(維持費) | 地上警備員削減 |
| 3年間削減効果(警備費) | — | 約2,400万円 |
AI連携(群衆密度の自動計測・異常検知)のシステム導入により、2023年度の22億5,700万円予算の一部がB県警察にも配分されています。
事例3:C県警察鑑識課 ── 犯行現場3D記録の証拠能力向上、記録時間80%短縮
刑事部鑑識課がドローンを活用した犯行現場の3次元記録を導入した事例です。従来の写真記録+平面図作成(8〜12時間)を、ドローン写真測量による3D点群データ生成(1.5〜2時間)に切り替えました。
証拠能力を担保する運用設計:
| 要件 | 導入した対応策 |
|---|---|
| 撮影日時の正確性 | 機体GPS時刻+現場の標準時計との照合記録 |
| 改ざん防止 | 撮影データのSHA-256ハッシュ値を飛行直後に記録 |
| 撮影者・操縦者の明確化 | 飛行記録に係員番号・職名・資格証明書番号を記入 |
| 飛行記録との整合 | フライトログと撮影記録を1:1で対応づけ保存 |
| データの二重保存 | 現場保管用コピー+鑑識課サーバーへの即日バックアップ |
時間・コスト比較:
| 項目 | 従来(写真+平面図) | ドローン3D記録 |
|---|---|---|
| 現場記録時間 | 8〜12時間 | 1.5〜2時間 |
| 鑑識員の現場拘束時間 | 全員8〜12時間 | 操縦者1名+補助1名のみ |
| 記録精度(長さ測定) | ±5mm(メジャー人力) | ±5〜10mm(点群自動算出) |
| 3D可視化(公判資料) | 別途費用で外注 | 解析ソフトで自動生成 |
警察組織のドローン導入実務チェックリスト
法令・手続きフェーズ
- 航空法:DIPS2.0での機体登録・飛行計画通報の実施
- 小型無人機等飛行禁止法:自組織の所管法令として運用ルール確認
- 都道府県公安委員会への飛行通報手順の明文化(職務上の飛行)
- 重要施設管理者への事前確認・同意取得フローの整備
- 証拠能力を担保する運用記録テンプレートの策定(ハッシュ値管理含む)
人材育成フェーズ
- 優先受講者の選定(警備部装備課・鑑識課・山岳救助担当)
- 二等国家資格の受講計画(学科オンライン対応で業務との両立)
- 夜間・目視外の限定変更取得計画(全員取得を推奨)
- 要人警護・大規模イベント担当者の一等資格取得計画
- NDA対応の研修機関の選定
運用開始フェーズ
- 飛行前安全チェック・気象判断手順の策定(風速・視程・障害物確認)
- 上空制限区域(禁止法対象施設300m圏)の地図への落とし込み
- 指揮系統への映像共有(リアルタイムFPV映像の指揮本部共有方法)
- 機体保険加入(対人1億円以上・対物5,000万円以上)
- 対ドローン検知装置との連携手順の確認(小型無人機等飛行禁止法第10条)
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執筆: ドローンライセンススクール 記事編集部 (ドローン免許センター 公式ブログ編集チーム)